東京地方裁判所 昭和56年(ワ)11917号 判決
一 請求の原因1及び2の事実は当事者間に争いがない。
二 右当事者間に争いのない甲、乙各考案の各実用新案登録請求の範囲の記載と成立につき争いのない甲第二、第三号証の各二(右各考案の実用新案公報)によれば、右各考案は次の構成要件からなるものと認められる。
1 甲考案
(一) 発泡用洗剤水液供給管を開口した容体の内底部に多孔空気吹込管を横設すること。
(二) 容体の前側壁の下方に泡噴出口を開口すること。
(三) 前側壁の内側に設けた仕切壁の上端から容体内に抵抗板を突設すること。
(四) 抵抗板の先端と容体の後側壁間に間隙通路を形成すること。
(五) 抵抗板と蓋の間及び前側壁と仕切壁の間に泡流通路を形成すること。
(六) 以上を特徴とする非水洗便器における発泡容器であること。
2 乙考案
(一) 密閉発泡容器とこの発泡容器上に並設した泡洗剤水溶液の貯蔵タンクと送風機をケース内に収容すること。
(二) 発泡容器内が常時一定水位となるよう貯蔵タンクを同容器に連通させること。
(三) 送風機から導出した多数の空気噴出孔を有する送気管を発泡容器中の水面下に挿入すること。
(四) 発泡容器の一側を上部を残して仕切板で仕切つて発泡容器の上部と連通した泡流通路を形成すること。
(五) 泡流通路の下底をケースの底部より導出した流出ガイドに連通させること。
(六) 泡洗装置であること。
三 原告は、被告製品の発泡容器部分は甲考案の、同じく泡洗装置部分は乙考案のそれぞれ技術的範囲に属すると主張するので検討するに、原告の主張する別紙目録記載の被告製品の構造によれば、被告製品の発泡容器部分は、泡噴出口が前側壁の上方にあり、また、仕切壁、抵抗板を具備しない構造であり、この点で、甲考案の構成要件(二)ないし(五)を充足せず、また、被告製品の泡洗装置部分は、発泡容器中に仕切板を具備せず、泡通路はその上部で流出ガイドに連通する構造であるとされるのであるから、この点で、乙考案の構成要件(四)、(五)を充足せず、したがつて、それぞれ甲考案、乙考案の各技術的範囲に属しないことが主張自体から明らかである。なお、本件全証拠によるも、被告製品の構造が甲、乙各考案の各構成要件を充足するものと認めるに足りない。
四 よつて、被告製品が甲、乙各考案の各技術的範囲に属することを前提とする原告の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がないから、これを棄却することとする。
〔編註〕本件登録実用新案に関する事項は左のとおりである。
1 原告は、次の各実用新案権(以下、(一)の実用新案権を「甲実用新案権」といい、その考案を「甲考案」という。(二)の実用新案権を「乙実用新案権」といい、その考案を「乙考案」という。)を前沢化成工業株式会社と共有している。
(一) 考案の名称 非水洗便器における発泡容器
出願日 昭和四八年一〇月二五日
出願公告日 昭和五〇年一一月一八日
登録日 昭和五一年八月二四日
登録番号 第一一四〇五五六号
(二) 考案の名称 泡洗装置
出願日 昭和四九年三月一四日
出願公告日 昭和五一年七月一三日
登録日 昭和五二年三月三一日
登録番号 第一一六七六四七号
2 甲考案及び乙考案の各願書に添付した明細書(以下、それぞれ「甲明細書」、「乙明細書」という。)の各実用新案登録請求の範囲の記載は、それぞれ、次の(一)、(二)のとおりである。
(一) 甲考案
「発泡用洗剤水液供給管3を開口した容体2の内底部に多孔空気吹込管6を横設し、容体2の前側壁14の下方に泡噴出口13を開口し、この前側壁14の内側に設けた仕切壁7の上端から容体2内に抵抗板9を突設し、この抵抗板9の先端と容体2の後側壁10間に間隙通路11を、抵抗板9と蓋1の間及び前側壁14と仕切壁7の間に泡流通路8、8´を形成したことを特徴とする非水洗便器における発泡容器」
(二) 乙考案
「ケース1内に、密閉発泡容器4とこの発泡容器4上に並設した泡洗剤水溶液の貯蔵タンク3と送風機2を収容し、前記発泡容器4内が常時一定水位となるように前記貯蔵タンク3を連通させ前記送風機2から導出した多数の空気噴出孔6を有する送気管5を前記発泡容器4中の水面下に挿入し、この発泡容器4の一側を上部を残して仕切板11で仕切つて発泡容器4の上部と連通した泡流通路10を形成し、この泡流通路10の下底を前記ケース1の底部より導出した流出ガイド12に連通させた泡洗装置」
3(一) 甲考案の構成要件は、次のとおりである。
(1) 発泡用洗剤水液供給管3を開口した容体2の内底部に多孔空気吹込管6を横設し、
(2) 容体2の前側壁14の下方に泡噴出口13を開口し、
(3) この前側壁14の内側に設けた仕切壁7の上端から容体2内に抵抗板9を突設し、
(4) この抵抗板9の先端と容体2の後側壁10間に間隙通路11を形成し、
(5) 抵抗板9と蓋1の間及び前側壁14と仕切壁の間には泡流通路8、8´を形成し、
(6) 以上を特徴とする非水洗便器における発泡容器であること。
(二) 甲考案の作用効果は、次のとおりである。
(1) 容体2の下底部の発泡洗剤水液の溜部に多孔空気吹込管6を設けて泡を発生させる。
(2) 右発生した泡を間隙通路11にみちびくので空気吹込管から洗剤水液内に空気が吹き込まれても直接液状のまま便器内に噴出することなく、完全に泡の状態となつてから通路11、8、8´を通つて泡噴出口13より便器内に噴出される。
(3) 泡の発生も短時間でしかも円滑に便器内に平均して泡を噴出できる。
4(一) 乙考案の構成要件は、次のとおりである。
(1) ケース1内に密閉発泡容器4とこの発泡容器4上に並設した泡洗剤水溶液の貯蔵タンク3と送風機2を収容し、前記発泡容器4内が常時一定水位となるように前記貯蔵タンク3を連通させ、
(2) 送風機2から導出した多数の空気噴出孔6を有する送気管5を前記発泡容器4中の水面下に挿入し、
(3) 発泡容器4の一側を上部を残して仕切板11で仕切つて発泡容器4の上部と連通した泡流通路10を形成し、この泡流通路10の下底を前記ケース1の底部より導出した流出ガイド12に連通させた泡洗装置。
(二) 乙考案の作用効果は、次のとおりである。
(1) 発泡容器4、泡洗剤水溶液の貯蔵タンク3、送風機2を一個のケース1内に収納したから、設置に際しては配管その他の現場施工を必要とせず所望の個所にケース1を取付けるだけの簡単な作業のみで良く、運搬その他にも便利である。
(2) 発泡容器4、貯蔵タンク3、送風器2がケース1内に収納されているから夫々に塵埃の介入を防止することができる。
(3) 送風機2に連通した多数の空気噴出孔6を有する送風機2のスイツチを入れるだけで発泡容器4内で発泡させることができ、更に発泡容器4は仕切板11で仕切つて一側に泡流通路10を形成しこの下底を流出ガイド12と連通させたから一時に大量の泡を放出させることができ便器内を泡で覆うことで目的とした泡洗効果の作用がある。